コラムやま

  第2回 「インターネットを流れるコンテンツの選別」 2005-01-31 13:44:25  
  作成者 : 管理者     
インタビューワのかわです。

1月も早過ぎ去ろうという時節ですが、今年最初のコラムやまをお届けします。発行遅れましてすみません。 
昨年は、大きな自然災害が次々に起きました。経済が回復基調とはいっても、ちっとも気分はすっきりしませんでしたね。新潟中越地震は大変でした。同僚に新潟県の出身人がいます。大変だった様子を生々しく話してくれました。いまでも完全な復旧には程遠い実情を聞くと心が重くなります。年末にはインドネシアスマトラ沖の地震と津波災害の報が飛び込んできました。未曾有の大災害でした。

次世代ICカードシステム研究会では最近、アセアン各国とも電子メールのやり取りがありますので、書き出しのところに、お悔やみの言葉を載せますと、被災地の近くの厳しい雰囲気が感謝の言葉とともにリプライされてきました。インターネットで世界が身近になったことを実感します。 皆さん、義援金などおすみでしょうか?今年は、悪いことは何も無ければと思います。

さて、前回のコラムやまでは、インターネットを使ったネット詐欺などで社会不安が広がっていることを大山「やま」会長から伺いましたが、ネットが引き起こす社会不安はこれだけではありませんね。今回は同じような視点で、インターネット社会におけるその他の問題に触れてみたいと思います。はじめはやま会長に、引き続きインタビューをしようと思っていたのですが、なかなか時間がもらえなくて・・・と思っていたら、わが研究会にはNICSSフェローの称号を持った方がいらっしゃいました。財団法人ニューメディア開発協会の常務理事で、財団法人インターネット協会の副理事長の国分明男さんです。この分野のことをお聞きするには、まさにピッタリの方です。そこで、今回のコラムやまは国分フェローに話をお聞きすることになりました。

なお、国分フェローのプロフィールはご自身がホームページを開設されていますので、そちらをご覧ください。 リンクの許可はいただいています。
国分さんのホームページ : http://www.nmda.or.jp/~kokubu/
国分さんがお仕事をされている団体へのリンク許可もいただいています。
財団法人ニューメディア開発協会 :  http://www.nmda.or.jp
財団法人インターネット協会 : http://www.iajapan.org/

インターネットを流れるコンテンツを選別できるか

かわ:国分さんはニューメディア開発協会とインターネット協会のどちらでも重鎮でいらっしゃいます。2個所でのお仕事はインターネット社会に安全・安心を確保する視点から、共通するミッションがあるように思いますが、国分さんからみて何が共通していますか。違っていることは何ですか。
国分フェロー:私はパソコン通信から始まって、ICカード、電子申請、電子自治体など、またコンテンツの問題についてはフィルタリグシステム開発などを手がけてきました。どれも、何も無い地面に種を蒔き、芽を出させ、育てあげるような仕事でした。 インターネットについてはインフラの分野とネットを流れるコンテンツの分野の双方に携わってきました。 私が手がけた当時は、どのプロジェクトも独立に研究開発していても良かった時代でしたが、時代が移るにつれて、それぞれの分野は幹を延ばし、枝を張り、何もなかった地面が広い林になりました。 つまり、それぞれの分野が大きく成長し、ひとつのおおきな有機体のようになってきました。 それぞれが大きく育ってきたのは、私だけではなく、皆さんが肥料や水をやってきたからです。 また、それぞれの分野がそろって大きく育ってきた原動力は、デジタル化とネットワークのオープン化であり、もちろんこのほかにもありますが、この二つは共通しているところだと思います。しかし一方では、充分日が当たっていた地面も、繁った葉にさえぎられてところどころ日陰もできるようになってきた、といえるかもしれません。

かわ:わが国のインターネット利用者は7000万人を超え、世界第二位にまで上がってきたようです。携帯を利用したインターネット利用の方は、世界でもっとも多く、ブロードバンドの普及率も世界でトップクラスです。 並行して、コンテンツの量も爆発的に増加しています。そして、国分さんのご専門のひとつであります有害コンテンツ対策が社会の大きな課題であり、これからのインターネットの健全な発展のためには有効な対策を講じられなければならないものと思いますが、いったいどのようなものが考えられますか。
国分フェロー:コンテンツの量がどのくらい増えているかは、はっきりとはわからないのです。 インターネットは、何しろ、国境を越えて繋がっていますからね。サーバの数やホームページのサイト数を調査することも極めて難しいし、どういった情報がどういう経路をどのくらい通っているか、調べることはもっと難しいことです。 しかし、分かっていることは、良い情報も悪い情報も、日々、増大していることですね。 良い情報も悪い情報も、というところが大事です。あわてて対策を講じてしまうと、良いほうも制限してしまうことになりかねません。 コンテンツが良いか悪いかは、たとえば電話を考えてみると分かります。電話は普通の会話や商談だけではなくて、犯罪の相談に使われることもあるわけですが、どこの電話会社も犯罪の通話を監視してはいません。 コンテンツに対して完全な制限はできません。これが原則です。 しかし、その電話でも、ワンギリ業者を締め出すとか、違法な詐欺を繰り返す業者の電話番号を使えなくするなどの対策をとられる時代になっていますから、インターネットの場合も、似たような対策をとる方向にはあると思います。

かわ:インターネット利用に際しては、子供の頃から、エチケットというか、マナーやリテラシーの教育が大変重要に思いますが、国分さんのお考えでは、今、何をしなければならいのでしょうか、あるいは今後、どのようなことをしなければならないでしょうか。
国分フェロー:現在はほとんどの学校でインターネット環境が整備されて、学校でどのように操作したらよいかなどを教えるようになってきていますが、まだ、マナー的なことまでは、現実にはなかなか教えられない状況です。 しかし、現実に、親だけでなく子供まで、何らかの被害を受けたり、犯罪に巻き込まれるようになると、カリキュラムの内容も変わってくるでしょう。 ただ、教える教師も育成しなければならないですね。 オンライン対戦ゲームの世界では、他人のIDを探し出し、他人の持っているアイテムを搾取し、究極はそれをネットオークションで売り買いするなどの問題が出てきています。 不当なお金を手にするのは、もう犯罪の領域でしょうが、IDを盗んで、ゲームの戦場で有利なポジションを得て、優越感に浸るといったことは、マナーに反する行為でしょう。皆がそういう考えにならないと良い方向には向かわないと思います。 

かわ:前回号の「コラムやま」では、サイバーというか、ネットの世界では、フィッシング詐欺のように、成りすまし等による詐欺が増えてゆくのではないか、そのためには、確実な相手確認が出来ることが必要であり、このために、ICカードはお役に立てると考えたわけですが、コンテンツの信頼性や健全性も重要だと思っています。 このあたりでICカードがお役に立てるということは考えられるでしょうか。
国分フェロー:ICカードはコンテンツ受信者側、すなわち利用者の権利を守るために、必要になると思います。 いろんなレベルの本人の認証が必要です。IDとパスワードでは不十分で、ICカードの利用がゆくゆくは必要だとおもいます。 ただ、導入のステップがどうあるべきか、は議論しなければならないでしょう。 一方、欠けているのはコンテンツの発信者側の認証です。ここが充分ではありません。ここにもICカードが使われていくかどうか、はっきりしませんが、インターネットサイトの認証ですから、ICカードよりむしろ、大山会長が提案する接続機器の証明書やそれを格納するICチップによるなんらかの認証手段の方が向いているのかもしれませんね。

かわ:当研究会の新しいホームページには第三者の認証機関による検証ボタンがついています。このホームページは本物だと示す認証に使います。(こらむやまの左横下のシールをクリックしてみてください) 過渡的にはこの方法もありますが、いかがでしょう。
国分フェロー:やろうと思えば、この検証自体を成りすますことも考えられますが、これもやられていないサイトもありますので、ある程度の安心感を与える方法として、やっても良いですね。 

かわ:インターネットは国境を越えたインフラですから、コンテンツの安全性や健全性も、国境を越えた環境整備が必要と思いますが、インターネット協会ではどのような視点でどのようなことを取り組まれているのでしょうか。
国分フェロー:ここはいろんな問題をはらんでいて、なかなか調整が難しいところですね。 一例を挙げますと、コンテンツの良し悪しの判定基準は当事国の文化や宗教、政治体制が大きく絡んできます。 インターネットが世界どこにでも繋がるというのは素晴らしいけれども、ある国ではOKでも、他の国ではNGなんてことは、多々あります。 発信者は自国の基準を適用するでしょうが、受信者の国の基準をもって受信できないようにすることを厳格に行うのは難しいでしょうね。 この例として、発信サーバがどこにあってもつながるので、規制のゆるい国にサーバをおいて、悪質なコンテンツを他国へ配信するという問題があります。 わが国に設置されたサーバが他国に迷惑をかけるとしたら、国際問題になる可能性が充分あるということですね。 もう一つの例として、わが国ではインターネット掲示板は放送とは捉えていませんが、国によっては放送法によってコントロールされ、コンテンツの内容規制がかかることがあります。 大多数の国でコンセンサスが取れそうなのは児童に対する有害コンテンツの対策でしょう。 私は、英国の非営利法人であるICRA(Internet Content Rating Association)の理事を務めていますが、既に様々な対策をとろうとしています。http://www.icra.org/

かわ:国分さんは、ニューメディア開発協会のお仕事に長年従事してこられて、特にICカードの草分け的事業をたくさんやってこられました。また、非接触ICカードの互換性検証では世界的にみても、最先端の設備とノウハウをお持ちになっています。 これはわが国の財産だと思いますが、今後の抱負をお聞かせください。
国分フェロー:デジタル万能の時代にあって、非接触インタフェースは、例外的に極めつきアナログ技術です。 カード端末の間の電波の分布と強度に応じて、カードは端末からの電波から電力を得て動作するわけですから。電波は往々にして環境に左右され、不安定になります。 カードと端末間での情報の授受ができなければ、カードを読み取り、書き込みすることはできませんが、メーカの異なる同士のカードと端末が対向すると様々に異なる条件ができてきます。 最終的には、異なるもの同士を網羅的に組み合わせてテストをすれば、ちゃんと読み書きできるか、保障ができるかもしれませんが、実際には大変難しいことです。テストの仕方自体がノウハウです。私のところでは、このノウハウの蓄積があります。これを生かして、標準カード、あるいは端末を準備しつつあります。 非接触のICカードは免許証をはじめ、電子パスポート、また、バイオメトリクス認証のカードなど、これからどんどん増えてきますので、この設備やノウハウはこれから有効に活用できると考えています。

かわ:国分さんには以前の当研究会の特別技術顧問をお願いし、多くのご指導を頂きました。 また昨年7月にNPO法人になってからは、第一号のNICSSフェローにご就任いただき、技術的な意見を頂いています。 当研究会はNPO法人らしく社会的貢献を果たさなくてはならないと思っていますが、NPO法人として、やるべきこと、あるいはやれそうなことについてサジェスションを頂きたいと思います。
国分フェロー:標準化や技術研究も大事ですが、研究会の活動をより多くの人に知ってもらい、また、世の中の人に役立つ施策を打って行くべきだと思います。 個人情報保護法の施行を4月に控え、個人でも組織でも、セキュリティに関する心配が増えています。 これらの心配に対するちゃんとした考えを用意しておき、世に問う姿勢が重要と思います。 マスコミなどにも積極的に働きかけて、変な方向に行くことのないようにすべきだと思います。  このコラムも含めて、一層の情報発信を増やしてゆくことが必要だと思います。

かわ:ありがとうございます。 インターネット協会では、フィルタリングに関するアンケートを行っていますね。 一般の人から意見をいただいて施策に生かし、さらに、その結果をフィードバックすることによって、いろいろな社会問題を一般の人とともに考えていくきっかけにしたいというねらいですね。  こういうやり方も参考にして、当研究会が社会に役に立つように努力したいと思います。
なお、アンケートは次のサイトにあります。 リンクを許可していただきましたので、ご一読ください。
    http://www.iajapan.org/rating/

次号は、ネットワークの安全といったことをテーマに、例として医療の分野をとりあげ、再びやまさんにお伺いする機会を得たいと思います。

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